2023.11.8 建設経済常任委員会行政視察(長崎市)

 11月8日、建設経済常任委員会で長崎県長崎市を視察しました。視察の概要は次の通りです。

【視察テーマ】 乗合タクシーについて

★視察先に選定した理由

 本市では、交通不便地域において、地域主体の取組として、善行地区で、平成29年度から「のりあい善行」が、六会地区で、令和元年度から「おでかけ六会」が本格運行を開始しています。更に、長後地区での導入を検討しましたが、採算が取れない見込みから、本格運行を見送った経過があります。しかし、地域における移動手段としての課題は解消していないことから、平成13年度に市の補助金を受けて実証実験を行い、翌14年度から、市の補助金なしで本格運行をしている、長崎市の乗合タクシーを視察先としたものです。

【乗合タクシー事業について】

 長崎市が公共交通空白地域対策としての「乗合タクシー事業」について、公共交通対策室の金原室長から説明を受けました。長崎市内には5つのJR駅があり、バス網が発達、徒歩圏の駅まで800m、バス停まで300mの人口カバー率は80%と高い。市民のバス代支出額、タクシー支出額、ともに全国3位で、公共交通に恵まれている。人口カバー率の残りの20%への対策として、乗合タクシーに取組むこととし、優先順位を決めて進めている。

1. 公共交通空白地域対策について

(1)背景

 ➀長崎市は、市街地の7割が斜面市街地といわれており、このような地形によりバスが乗り入れられない地域、いわゆる「バス空白地域」が数多く存在している。

 ➁地域住民からも何らかの公共交通機関の整備が望まれている。

 ➂このような「バス空白地域」を解消していくことが、「利便性の向上」「公共交通機関の利用促進による交通混雑の緩和」「高齢者等の社会参加の促進」を図るうえで、重要な課題となっている。

(2)基本方針

 ➀バス空白地域において、現状の道路拡幅等の走行環境を整え、現実的に運行可能な輸送手段の確保を目指す。

 ➁輸送手段の確保にあたっては、小型バスも含めた乗合バスによる運行を基本とし、乗り合いバスによる運行が困難な場合は、乗合タクシーによる運行を目指す。

(3)取組む地域の抽出

 バス空白地域抽出基準により、市内25地区を抽出、優先度が低い地区を除外し11地区を対象地区として、その中から5地区を選定して次の通りの事業を進めている。

 ➀西北地区(西北町・若竹町):面積14.4ha/人口1,270人/平成21年度本格運行開始/運行距離約2.0~4.0km/運行本数平日27往復(7:30~19:20)、土休日16往復(10:00~18:08)

 ➁金堀地区(金堀町):面積15.1ha/人口2,100人/平成16年度本格運行開始/運行距離約4.5~6.8km/運行本数平日13往復(7:30~18:58)、土休日11往復(8:15~18:34)

 ➂丸善団地地区(大手1、2丁目・三原町・辻町・石神町):面積28.5ha/人口2,860人/平成14年度本格運行開始/運行距離約5.0km/運行本数平日25往復(7:30~19:45)、土休日22往復(9:00~19:45)

 ➃矢の平・伊良林地区(矢の平2、3丁目・伊良林2、3丁目):面積71.3ha/人口3,790人/平成14年度本格運行開始/運行距離約6.5km/運行本数平日25往復(7:30~19:46)、土休日22往復(9:00~19:46)

 ➄北大浦地区(西小島2丁目・中小島2丁目・稲田町・中新町):面積31.6ha/人口4,630人/平成16年度本格運行開始/運行距離約4.1km/運行本数平日23往復(8:30~19:50)、土休日22往復(9:00~19:50)

 なお、運行事業者は、どの地区もタクシー会社が担い、車両は定員9人のジャンボタクシーで運賃は、大人(中学生以上)300円、子供(小学生以下)150円、幼児(1歳未満)は無料。なお、物価高騰、タクシー料金の値上げの状況から、令和5年度からは、料金を大人200円から300円に、小人を100円から150円に値上げをし、激変緩和措置として、プレミアム回数券を発行とたとのこと。

(4)乗合タクシーの運行実績(令和3.4年度決算)

 ➀西北地区

 【令和3年度】年間利用者数34,815人、1日平均利用者数118人/運行経費10,755,349円/収入5,954,590円/差額(補助金)4,800,759円/補助率45%

 【令和4年度】年間利用者数34,771人、1日平均利用者数118人/運行経費10,180,252円/収入5,886,318円/差額(補助金)4,293,934円/補助率42%

 ➁金堀地区

 【令和3年度】年間利用者数21,322人、1日平均利用者数72人/運行経費11,832,430円/収入2,886,636円/差額(補助金)8,945,794円/補助率76%

 【令和4年度】年間利用者数20,701人、1日平均利用者数70人/運行経費10,552,828円/収入2,858,817円/差額(補助金)7,694,011円/補助率73%

 ➂丸善団地地区

 【令和3年度】年間利用者数62,222人、1日平均利用者数172人/運行経費13,750,605円/収入10,170,763円/差額(補助金)3,579,842円/補助率26%

 【令和4年度】年間利用者数62,250人、1日平均利用者数172人/運行経費12,930,875円/収入10,321,120円/差額(補助金)2,609,755円/補助率20%

 ➃矢の平・伊良林地区

 【令和3年度】年間利用者数51,880人、1日平均利用者数143人/運行経費14,206,093円/収入8,755,000円/差額(補助金)5,451,093円/補助率38%

 【令和4年度】年間利用者数42,091人、1日平均利用者数117人/運行経費13,085,134円/収入6,988,590円/差額(補助金)6,096,544円/補助率47%

 ➄北大浦地区(西小島2丁目・中小島2丁目・稲田町・中新町):面積31.6ha/人口4,630人/平成16年度本格運行開始/運行距離約4.1km/運行本数平日23往復(8:30~19:50)、土休日22往復(9:00~19:50)

 【令和3年度】年間利用者数29,838人、1日平均利用者数101人/運行経費11,211,585円/収入5,217,091円/差額(補助金)5,994,494円/補助率53%

 【令和4年度】年間利用者数30,036人、1日平均利用者数102人/運行経費10,574,861円/収入5,125,545円/差額(補助金)5,449,316円/補助率52%

 なお、補助率は30%を目指しているとのことでしたが、利用者数は人口密集度の減少により、同様に利用者数も減少傾向にあるとのこと。

(5)市民等からの評価

 導入地区の住民からは、最寄りの商店街などへの移動手段が確保されていることから、大変好評を得ているが、タクシー事業者は、タクシー事業への影響から、好意的な意見は少ない。

(6)課題について

 ➀利用者数の減少や物価高騰に伴う運行経費の増加により、補助金も年々増加している。

 ➁近年は運転手を募集しても集まらない状況にあり、担い手不足によって運行継続が困難となる可能性も高まっている。

 ➂その他のバス空白地域については、人口規模が小さいことや、道路幅員が狭隘であることから、今後、行政が主体となった新たな地区での乗合タクシーの運行は難しい。

(7)今後の展望について

 ➀導入地区では引き続き、適正運行便数や運賃の設定をしていくとともに、利用状況次第では、定時定路線型からデマンド型などへ輸送方式を見直すことや、他の交通モードへの転換についても視野に入れていく。

 ➁その他の人口規模が小さいバス空白地域では、タクシーの相乗りなどの共助による移動手段について研究を進めていく。

【視察先での主な質疑】

 乗合タクシーの周知啓発の状況は?⇒年1回、全戸回覧で周知している。

 プレミアム回数券を緩和措置として導入したとのことだったが、限定ICカードは検討されたのか?⇒導入に莫大な費用がかかるため、導入しなかった。

 この事業には交通事業者の理解が必要。定期的な意見交換をしているのか?⇒会議体はあり、定期的に設けている。ただし、事業者側はやめられるのなら、いつでもやめるというスタンス。やめればタクシーで営業できる。赤字分は市が負担するので、タクシー会社は利用者を増やそうとはしない。

 利用率のバラツキの要因は?⇒タクシーで1,000円、1,500円のところを300円で利用できる。距離のある所を利用している。北大浦地区では、上りの利用者が下りの倍となっている。

 人口の多いところが利用多いとは限らない。値ごろ感なのか?⇒複合的要因ある。丸善地区は人口が集中している場所と商店街まで2~2.5kmある。集積の度合いにバラツキがある。

 高齢化が進んでいく中で、利用率が低くなり、補助金が増加していく。どこまで行政が支援をしていくのか?⇒人口カバー率の残り20%の地区をすべてカバーするのは難しい。立地適正化計画の中で、居住誘導区域へ誘導するなどの対応が重要と考えている。

 平成14年度から本格運行している地区について、国交省の資料では、平成19年度までしか記載なかったが、黒字となっていた。どこかのタイミングで赤字になったと思うが、それまでの利益の蓄積について、赤字になったときに活用されたのか?⇒単年度収支としているのでない。タクシー会社としては、その分タクシー利用が減ったということで整理されている。

 利用者が減っている理由は?⇒人口密集度が減ってきているため。

【まとめ】

 今回、視察先に選ぶにあたり、国交省の資料で黒字運営がされているとしいうことで、視察先に選定しましたが、話を聞いてみると、運行当初は黒字で運営していたが、利用者の減少に伴い、現在は赤字運営で、その赤字分を市が補助しているとのことでした。令和5年度に運賃の値上げをしたことにより、黒字となる地区も出てくるとのことでしたが、事業展開している地区の中では、補助率が70%を超える地区もあり、厳しい状況にあることもわかりました。長崎市の場合は面積も広く、タクシーの利用料金と乗合タクシーの運賃を比べて割安感があり、利用者も多いと思いますが、面積の狭い藤沢市では、その割安感を得ることも難しいのではと感じました。今回の視察では、乗合タクシー事業の財政面での難しさを改めて認識することとなり、藤沢市内の他の地区への導入に向けて、有効な手段として何かを得ることができませんでした。

※以上、報告とします。

 

 


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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