2018.1.31 議会改革検討会行政視察(福岡市)

 1月31日 藤沢市議会改革検討会で、福岡市に行政視察を行い、委員として参加しました。内容の抜粋は次の通りです。

【テーマ】 政策立案機能の強化について

 藤沢市議会では、過去に議員提案で、藤沢市地産地消の推進に関する条例を議員提案で制定しましたが、議員提案による条例化は進んでいません。この間、議会改革検討会の中で、議員による政策提案・条例提案について、仕組みづくりを検討してきましたが、結論に至らず継続協議となっています。今回の視察は、先進的に議員提案による政策条例に取組んでいる福岡市に視察をしたものです。

1. 議員による政策提案のメリット

(1)議会では、市執行部の部局単位にとどまることなく、広い視野から地域全体を概観した条例を提案できる。

(2)当面の課題解決に追われる行政に代わって、まちや市民のあるべき姿や数十年先を見通した基本計画を示した条例提案ができる。

(3)市民に近い立場を活用して、地域や住民の要望を反映した条例を提案できる。

(4)新しい政策課題を取り上げた条例を提案できる。

(5)少数者の思いを掘り起こす条例を提案できる。

2. 議会事務局体制

 議会事務局の定数は41人。うち、議員提案に関係する「法制係」は3人体制。

 ★職員を衆議院法制局に2年間派遣し、法案に関する業務に携わることで、条例づくりに関するスキルを取得しているとのことでした。

3. 議員提案の検討主体

(1)会派主導型

 特定の会派が検討・提案の主体となるもの。多数会派の場合は議決の際に有利となる。少数会派からの提案の場合は、否決される可能性が高くなる。

(2)議員主導型

 同一の目的を持った有志議員・議員個人によるもの。有志議員の場合は、案がまとまりやすい傾向にあるが、メンバー以外の議員の同意を得る必要がある。

(3)議員全員型

 議会全体で目的を共有していることから、案がまとまれば、成立する公算が高い反面、まとまるまでに時間を要する可能性がある。

4. 議員提案による政策条例を策定するにあたって「議会事務局(法制係)」の作業

(1)条例化の必要性を確認

(2)どのような内容の条例を作りたいのかを確認(目的の明確化)

(3)調査による裏打ち

 ① 市の実態調査

 関係部局からのヒアリングの実施などで、条例化の必要性を把握し、実情に応じた条例を策定できる。

 ② 他都市の類似事例の調査

 他都市に類似の条例があれば、条例制定に至った経緯や条例制定後の効果等について、視察を含めた調査を行い参考とする。

(4)条例内容の精査

 ① 法的適合性の調査

 法律の範囲内であること、議員に提案権があることを確認する。

 ② 対応・規制しようとする事項を明確に表現する

 条例の対象となる主体(誰が)、客体(何について)、規制・奨励される作為・不作為(どうする・どうしないことが望まれているか)を明確に規定し、目的を達成するための手段として妥当な内容となっているのかを確認する。

 ③ 実効性確保のための規定づくり

 条例の目的に応じて、規制に関する事項、支援・誘導に関する事項、普及・啓発に関する事項、方針・体制の整備に関する事項を定める。また、一定期間経過後の見直しに関する事項の要否も検討する。

(5)会派間の調整

 検討している条例への理解を得るため、検討主体が会派主導型の場合は、他会派への働きかけ、議員主導型の場合は、所属会派内および他会派への働きかけが望まれる。

(6)関係各所との調整

 予算措置や政策の事業化を要する場合は、執行部との協議・調整が望まれ、行政刑罰をを定める場合は、検察・警察との調整を要する。

(7)議会運営委員会での説明

 条例案の議会上程に先立ち、議会招集告示日に開催される議会運営委員会において、条例案の提出者による説明を要する。なお、常任委員会での立案等、招集告示日の議会運営委員会での説明ができない場合は、告示日以降の議会運営委員会にて適宜説明を要する。

(8)提案理由説明文や想定問答の作成

 上程された条例案は、提出者が本会議で提案理由説明を行い、他の議員から質疑があった場合は、提出者が答弁する。従って、当該説明および答弁を円滑に進めるためにも提案理由説明文および想定問答の事前作成が望まれる。

(9)関連する常任委員会での説明・質疑対応

 本会議での質疑の後、常任委員会に付託され、委員会審査を受けることとなる。提出者が所管の常任委員会に所属していれば、当該議員が委員会にて条例案の説明・質疑対応をすることとなるが、所属していない場合は、提出者以外の議員に説明・質疑対応を依頼することも考えられる。なお、委員会審査を経た条例案は、その後の本会議における委員長報告、討論を経て、採決によって条例案の可否が決される。

5. 議員提出条例(政策条例に限る)の提出状況

(1)平成10年10月1日「可決」 福岡市議会議員の政治倫理に関する条例案

(2)平成14年6月18日「否決」 福岡市介護保険条例の一部を改正する条例案

(3)平成14年6月18日「否決」 福岡市在宅サービスの利用料の助成に関する条例案

(4)平成14年12月18日「可決」 人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例案

(5)平成14年12月18日「可決」 福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例案

(6)平成16年3月26日「可決」 出資法人等の保有する情報の議会への提供等に関する条例案

(7)平成16年3月26日「可決」 福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例の一部を改正する条例案

(8)平成17年6月22日「可決」 福岡市議会議員の政治倫理に関する条例の一部を改正する条例案

(9)平成18年6月21日「可決」 福岡市市行政に係る重要な計画の議決等に関する条例案

(10)平成18年9月15日「可決」 福岡市風俗関連の営業に係る勧誘、誘引及び客待ち等の防止に関する条例案

(11)平成18年9月15日「可決」 福岡市議会議員選挙公報発行条例案

(12)平成20年3月25日「修正可決」 福岡市留守家庭子ども会事業の実施に関する条例の一部を改正する条例案

(14)平成20年6月20日「可決」 人に優しく安全で快適なまち福岡をつくる条例の一部を改正する条例案

(15)平成22年3月26日「可決」 公共交通空白地等及び移動制約者に係る生活交通の確保に関する条例案

(16)平成22年3月26日「否決」 福岡市住宅リフォーム助成条例案

(17)平成24年3月26日「可決」 福岡市市行政に係る重要な計画の議決等に関する条例の一部を改正する条例案

(18)平成25年9月25日「可決」 福岡市空き家の倒壊等による被害の防止に関する条例案

(19)平成26年9月16日「可決」 ふくおかさん家のうまかもん条例案

(20)平成28年12月22日「可決」 福岡市空家等の適切な管理に関する条例案

(21)平成29年4月13日「再議・否決」 活力ある福岡空港づくり基金条例案

★参考に(19)ふくおかさん家のうまかもん条例案の検討から議決までの手順は次の通りです。

 この条例案は、市内産農林水産物とその加工品等の生産・加工・利用・消費を拡大し、食に関する選択の機会の確保、食を目的とする観光客の来訪の促進等を図り、もって関連産業の健全な発展及び市民の健康で豊かな生活の向上に寄与することを目的としています。

・平成25年10月 第1回勉強会 超党派の有志議員8人でテーマを選定して、条例案を提出することとなった。

・平成25年11月~26年3月 第2回~6回勉強会 関係局(農林水産局・経済観光文化局)とヒアリングを行うとともに、先進都市を視察することとなった。

・平成26年4月 視察 「食」に関する取組を進めている、金沢市・小浜市・京都市を視察した。

・平成26年5月~8月 第7~15回勉強会 視察の成果を踏まえて、条例案骨子を作成し、関係局からのヒアリング、正副議長への説明を行い、条例案を作成した。

・平成26年8月下旬 条例案について、各メンバーより、所属会派への説明、メンバーの所属しない会派や無所属議員へ説明した。

・平成26年8月29日 議会運営委員会において、同委員会のメンバーから、9月議会に条例案提出の意向が示された。

・平成26年9月5日 9月議会初日、勉強会の座長が本会議で提案説明を行った。メンバー以外の議員が質疑を行い、副座長・副市長が答弁した。

・平成26年9月12日 付託された常任委員会で、提出者となったメンバー外の議員が提案理由説明を行った。

・平成26年9月16日 本会議において、全会一致で可決された。

・平成26年9月18日 条例が公布された。

6. 所感

 福岡市議会事務局の法制係の職員は、衆議院法制局へ人事派遣がされています。国会では年間50本以上の法案が議員提案されていますが、議員提案に至らない件数を含めると100本を超えるとのことでした。そこでの経験を持って議会事務局の法制係に戻り、議員提案のサポートをすることは、議員にとっては、とても力強いと思います。
 更に、現在、私が所属する会派「民主クラブ」では、子どもの貧困対策に関する条例化を目指して取組んでいますが、福岡市のような仕組み・体制があれば、違った形で進めることができたと思います。仮に藤沢市議会に同様な体制を整備するためには、衆議院法制局のようなところに人事派遣をして、スキルを身につける必要があると思います。もしかしたらこの視察を契機として、藤沢市議会にも法制担当を配置して、同様な取組をするべきという声が上がるかもしれませんが、一方で、私たち議員のスキルを上げることも必要であり、セットで検討する必要があると感じます。

 以上、報告とします。

 


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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