2014.4.23 川西市視察

 4月23日、会派「かわせみクラブ」の視察に参加しました。私は翌24日に広報広聴委員会がありましたので、23日の朝から、大阪市の文化、芸術に関する施設を見た後、兵庫県川西市に入りました。川西市の視察のテーマは、「子どもの人権オンブズパーソン制度」についてです。

 1980年代以降、学校内外における「いじめ等」による子どもの自殺が全国的に頻発し、大きな社会問題となっていました。主な事案としては、①1986年2月、教師も関わっていた「葬式ごっこ」が原因で自殺した、東京都中野区の中学2年生の事案/②1993年1月、体育館内の運動用マットに逆さまに突っ込まれた形で死んだ山形県新庄市の中学1年生の事案/③1993年11月、川に沈められたり、多額の現金をとられていたという遺書を残して自殺した愛知県西尾市の中学2年生の事案など、人の命を奪うような陰湿ないじめが学校現場で発生し、社会に大きな衝撃を与えました。

 このような事態を背景として、川西市教育委員会において、対岸の火事ではないという危機感を持って、1994(平成6)年度末から、学校内でのいじめ等の対策に関して検討・協議に取り組んだとのことでした。そして、一人ひとりの子どものSOSを受け止め、いじめや体罰、差別、不登校、虐待などで、子どもが苦しむことのないよう、一つひとつ具体的な人権侵害から、擁護・救済を図るために、全国で初めて、市の条例により、1998(平成10)年12月に、子どもの人権救済のための「公的第三者機関」が創設されたものです。

 制度の概要等は次の通りです。

1.組織・体制

(1)オンブズパーソン 3名

 ①代表オンブズパーソン 大学名誉教授(発達心理学、子ども学)

 ②代表代行オンブズパーソン 大学准教授(教育学、保育学)

 ③オンブズパーソン 弁護士(学校問題、法教育)

(2)調査相談専門員 4名

 オンブズパーソンのアシスタント。子どもや保護者等からの相談や申し立てを最初に受け、オンブズパーソンに報告。相談の継続や調査活動にも携わる。

(3)調査相談専門員 8名

 オンブズパーソンや相談員を助ける専門家(法律、医療、学校教育、福祉等)で、オンブズパーソンから必要な専門的知見や情報提供を求められたときに活動する。

(4)事務局(行政職) 1名

2.制度の特徴

(1)公的第三者機関と独立性

 市の機関とは独立し、地方自治法に基づく市長の付属機関として設置している。

(2)専門性

 ①オンブズパーソンは、法曹界関係者、大学・研究関係者、NPO等の子どもの人権に係る活動関係者などから、市長が委嘱する。

 ②相談員および専門員は、高い専門性や知識・経験を有する者。

(3)子どもに寄り添い、子どもの心情の代弁

 子供に寄り添って話を聴くことで、子どもが認められ尊重されていると実感して、自分の力で解決に踏み出すきっかけが生まれる。オンブズパーソンは、擁護者として、子どもに寄り添い、子どもの代弁者として関係する人たちと一緒に考える調整機能を持つ。

(4)制度の実効性の担保

 ①条例において、オンブズパーソンには、「市の機関」に対する調査権、勧告および意見表明権が付与されている。

 ②条例で、市の機関に対しては、「オンブズパーソンの職務の遂行に関し、その独立性を尊重し、積極的に協力、援助しなければならない」と規定し、併せて、勧告・意見表明の尊重義務を課している。

3.活動内容

(1)相談活動

 相談員が、電話や面接で、受容的に丁寧に話を聴き、子どもが相手や周りの大人などとの対応を自ら行えるための援助を行う。

(2)調整活動

 問題の打開や解決に必要な場合は、子どもや保護者等の相談者から了解を得たうえで、学校等関係者間の関係調整を図る。子どもの問題解決には、子どもを取り巻く人間関係の変容が必要であり、オンブズパーソンが子どもに関わりのある大人(教員や保護者など)に、子どもの心情が伝わるように、建設的な対話に努める。その中で、「子どもの最善の利益」の実現のため、子どもにとってより良い人間関係が、新たにつくり直されていくよう、「橋渡し役」を担う。

 ★「対決型」「告発型」の対応ではなく、子ども自身が立ち直り、成長していく関係づくりを重視している。

(3)調査活動

 相談の継続だけでは問題が解決できないと思われる場合で、客観的な事実関係を把握するため、第三者による調査が必要と考えられるケースについて、子どもの擁護救済の「申立て」があった時は、オンブズパーソンや相談員が関係機関に対して、聞き取りを中心とした調査を実施する。また、オンブズパーソンは、独自入手情報から、自己発意により調査ができる。

4.平成25年度の状況

(1)相談件数 211案件/述べ相談件数 920件

(2)相談者 子ども37.3%/保護者39.1%/教職員等23.6%

(3)主な相談内容の内訳

 ①子ども  家族関係21.7%/交友関係18.3%/不登校18.3%/いじめ6.7%/教職員等の指導上の問題6.7%

 ②大人  家族関係15.9%/いじめ10.6%/子育ての悩み9.9%/子どもの不登校9.3%

 

【視察をして】

 川西市の子どもの人権オンブズパーソン制度について、制度をつくるに至った背景や経過、制度の内容、そして、具体的な相談解決の事例を伺いました。いじめ、体罰は子どもの人権侵害という考えで、例えば、いじめをする側、された側のそれぞれの背景を重視し、子どもの心情を、寄り添う中で丁寧にさぐり、信頼関係をつくりながら、当事者自ら解決していくように、様々な調整をしていることが分かりました。

 どうしても、教育委員会、行政内部だけでは、解決できない、あるいは、解決できたと勘違いしているケースについて、行政の立場でない第三者が、子どもの最善の利益を最大の目的として活動することは、今の時代からすると必要だと感じました。また、平成25年度は211案件に対応しているとの事でしたが、私は、多くある解決事例を教職員や行政職員が共有することにより、同じようなケースで、対応を間違わないように出来るのでは?と思い、質問しましたが、プライバシーの問題もあり、そこまでの対応はしていないとの事でした。

 この川西市の制度については、藤沢市でも導入を検討すべきだと思いましたし、会派「かわせみクラブ」として、取り組んでいきたいと考えています。

 以上、視察報告とします。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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