2012.7.2 新潟県三条市を視察

 7月2日、三条市の「子ども・若者総合サポートシステム」について、竹村議員・脇議員・青木議員とともに、視察に行ってきました。「子ども・若者総合サポートシステム」とは、乳幼児から就労・自立に至るまで、切れ目のなく一貫して、個に応じた、必要な支援を総合的に受けられるようにするため、市(子育て支援課)が、その情報を可能な限り集約・一元化するとともに、関係組織・機関と連携して支援するシステムです。概要は次の通りです。

1.背景

 平成18年7月から新しい市長になり、その市長が、様々な政策について、「セクションごとの責任ではなく、市の責任!」という考えを示した。そのことにより、組織を見直し、従来は、市民が色々案内され、市民自らが各課に行っていたものを、一つの窓口で完結するような体制をつくった。

2.子ども・若者総合サポートシステムのポイント

 ①市が、子ども・若者という「市民」の支援体制の構築について、責任を持つという理念に立ったこと。

 ②教育委員会内に、福祉系組織の「子育て支援課」があり、調整組織として機能していること。

 ③内閣府・文科省・厚労省がそれぞれ推奨する、虐待、障がい、問題行動、ひきこもり等への支援ネットワークを統合していること。

 ④市内の国・県機関などの外部機関との「情報共有化」について、整理がされており、現行の個人情報保護法下で機能できるようにしていること。

 ⑤保護者応援ツールとして、子育てサポートファイル「すまいるファイル」を全ての子どもを対象に配布していること。

 ⑥中学校卒業後もフォローできるよう対象者を若者までとしていること。

3.すまいるファイル

 出生届を提出された時に、全ての子どもに配布。子どもの診断歴や発達の記録を保護者がつづり、相談が必要になったときには、このファイルをもとに相談に応じ、関係機関との情報共有にも使用できるものです。また、ファイルは、母子手帳も収納出来るようになっています。どんなファイルか、下のURLをクリックして、三条市のすまいるファイルをご覧下さい。http://www.city.sanjo.niigata.jp/kosodate/page00223.html#v2

4.対象者

 このシステムの対象者は、すべての支援が必要な子ども・若者を対象とし、対象年齢は、乳幼児期~35才まで。学校卒業後は、就労支援が中心となります。

5.支援すべき内容

 ①虐待

 ②すべての障がい(その傾向が心配される子どもを含む)

 ③不登校、非行など、主として学校における問題

 ④引きこもりなど(学校卒業後のもの)

 ⑤その他、支援が必要なもの。

6.従来との違い

 ①支援機関の自主的連携から、子育て支援課が情報を一元管理。各支援組織と連携して、支援が必要な子ども等が、必要な   支援を受けられているか、情報を把握し、各支援組織の特性に応じて、支援体制を構築する。支援を受けている組織において、十分な支援が受けなれていないと感じた時は、子育て支援課に相談すれば、支援体制の再構築することも可能。

 ②中学校卒業後の就労を支援する事業を追加。中学校を卒業して、いわゆる「引きこもり」や「ニート」になったとしても、学校に替わって、家庭訪問をする人材を確保し、就労へ促す取組を行うこととした。

7.情報の共有について

 調整機関の子育て支援課が、教育委員会の中にあるメリットを最大限活かして、関係機関との情報共有を進める。情報の一元化のために、子育て支援課で個人の支援台帳「子ども・若者支援台帳」を作成し、各支援機関の協力により、随時、情報を更新する。

 虐待については、保護者の同意がなくてもよい。児童虐待や問題行動に対しては、早期に対応しなければならないことから、関係機関と連携して、迅速に対応する。

 障がい、引きこもりなどで、支援が途切れてしまったり、他の支援も検討する必要がある場合は、相談時に説明書を渡し、同意をいただいた上で、関係機関と情報を共有する。

8.組織体制

 代表者会議の下に、虐待防止部会・問題行動対応部会・障がい支援部会・若者支援部会の4部会の実務者会議を置く。実務者会議には、次のように、多くの関係機関が参画している。

 ①司法・警察関係

  法務局・少年鑑別所・人権擁護委員協議会・警察署・保護司会・弁護士会

 ②教育関係

  小学校長会・中学校長会・高等学校長協会・特別支援学校・PTA連合会・私立幼稚園連盟・青少年指導委員会

 ③保健福祉関係

  児童相談所・県健康福祉環境部・社会福祉協議会・民生委員児童委員協議会・私立保育園連盟連絡協議会

 ④障がい者関係団体

  手をつなぐ育成会

 ⑤医療関係

  医師会・歯科医師会

 ⑥就労関係

  公共職業安定所・若者サポートステーション

 ⑦地域

  自治会長協議会・青少年育成市民会議

 ⑧三条市

  市民窓口課・福祉課・健康づくり課・商工課・子育て支援課・学校教育課・消防本部

9.所感

 ①藤沢市でも、教育と福祉が連携し、支援が必要な子ども達への体制は整っていますが、三条市のように、一つの課が一貫して情報管理・他課や部にまたがる調整をする体制ではありません。人口規模や支援を必要としている人数や個別のケースなど、様々な状況があるので、一概に三条市と同様にするべきとは言えませんが、三条市のシステムの背景「セクションの責任ではなく、市が責任をもって支援する」という理念は、素晴らしく、十分参考となるシステムと言えます。

 また、藤沢市では、障がい者就労や若者の就労について、勤労市民課がその支援事業を行っていますが、三条市のシステムでは、その部分も子育て支援課が情報管理・調整をしていました。幼児期から若者までの一貫した支援については、藤沢市でも検討に値すると感じました。

 ②藤沢市に置き換えて想像すると、他部にまたがる事業であるため、一元管理する課の課長の権限をどうするか?同じ課長に対して、指示命令系統ができることになります。藤沢市では、過去に部門総務課があり、かなりの権限を持たしていたため、総務課が調整機能を果たしていました。組織改正で、総務課が廃止され、部長中心主義となりましたが、残念ながら、総務課があったときの方が、良かったと感じています。三条市のようなシステムにするためには、一元管理する課の課長の権限を考える必要があると思います。三条市の方に聞いてみましたが、三条市では、特に問題はなかったそうです。

 ③三条市では、一階窓口でのワンストップサービスが充実していました。戸籍・住民基本台帳・印鑑証明・国民年金・市税証明・市税収納・国民健康保険・長寿医療制度・各種医療・生活保護・障がい者福祉・子育て支援・保育所・高齢者福祉・介護保険認定申請などを窓口グーループとして、受け付ける体制です。とにかく、市民に、あちらに行って下さいという対応をしない。必要があったら、担当課の職員が行くというスタンスなのです。藤沢市役所は、現在、庁舎の建て替えを検討中です。新たな市役所には、三条市のような視点が必要と考えます。是非、9月議会の一般質問で、理事者の考え方を聞いてみたいと思います。

 最後に、忙しい中、視察を受け入れてくれた、三条市の長谷川教育長・子育て支援課の清水さん・議会事務局の中村さん・燕三条駅からの送迎をして下さった職員の方へ感謝をし、視察の報告とします。

 


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

アーカイブ