2018.10.23 総務常任委員会視察(上越市)

 10月23日 総務常任委員会で上越市を視察しました。内容の概要は次の通りです。

【視察テーマ】 PFI手法による「市民プラザ整備事業」について

★視察先に選定した理由

 上越市では、市民が利用する公共施設としては全国に先駆けてPFI手法による市民プラザ整備事業を実施しており、藤沢市としても公共施設再整備基本方針において、PPP、PFI手法の検討を位置付けていることから、今後の再整備に向けて、参考となると考え上越市を視察先に選定したものです。なお、視察の受入れについては、上越市行政ではなく、PFIの担い手である、(株)上越シビックサービス(SPC)の方から説明を受けました。

【事業会社及び資金調達】

1. 名称 (株)上越シビックサービス(出資者 熊谷組60%/日本管財40%)

2. 融資 オリックス(株) 9億1千万円/返済期間20年

【事業の概要】

1. 施設用途 公益的施設(市民プラザ)

2. 事業目的 様々な市民活動、交流の場として市民プラザを整備、運営する

3. 事業スキーム サービス購入型+独立採算事業

4. 事業方式 BTO方式

5. 整備方法 コンバージョンによる施設整備(既存商業施設⇒公共的施設)

6. 資金調達 プロジェクトファイナンス

7. 事業内容 設計/建設/維持管理/中長期修繕/民間テナント運営(独立採算事業)

8. 供用開始 2001年4月1日(運営期間20年)

9. 指定管理 2004年4月より、受付、貸館、自主事業等について指定管理者制度を導入。シビックサービスが2007年より指定されている。

【視察時の説明】(株)シビックサービスの総括マネージャー「赤岡氏」

 この施設(市民プラザ)は、昭和60年に開業したイオンが11年間ショッピングセンターとして営業し、1996年に上越インターチェンジ付近にに移転となり、4年間遊休状態だった。上越市に土地を買ってもらい、建物は上越市に寄付となった。当時の市長が、PFI法施行前だったが、PFI手法で整備することとなった。

 この施設の目的は、市民活動の活性化、地縁組織の強化として、旧イオンの建物をコンバージョン(仕様変更)した。利用者の視点に立ち、いかに利用されるかが重要である。会議室、多目的室、音楽室など様々な名称を勝手に付けたが、利用の仕方を決めるのは利用者側であり、工芸室も確定申告や選挙の期日前投票所として使用されている。

 利用者数については、年間20万人を想定していた。しかし、人口20万人弱なのに年間35万人が利用している。市民活動の活性化が目的なので、使用料が安いため、企業が利用し、医療関係の勉強会などか行われている。ホテルや会議場から移行がされている。民業圧迫が懸念されるが、あくまで目的は市民活動としている。

 この施設には、NPO・ボランティアセンターが入っているため、必然的にボランティアやNPOの方々が集まってくる。団体による自らのイベント、秋色・春色フェスタなどの発表や販売も多くされている。

 子どもセンターは、柔らかい素材のフローリングにして、NPOによる補助員がいる中で、保護者付きで子どもを遊ばせる施設。上越市は雪深い地域であり、子どもを遊ばせる場所がない。そのスペースとしてもつくられたものだが、保護者の交流、ママ友、父親との交流などにもなっている。また、保護者のガス抜きや情報交換の場にもなっている。

 行政と民間との関りについては、意識の共有が重要。行政側の認識は人事異動により変わってしまう。設置から17年も経つと、当初の職員は退職しており、行政とのコミュニケーションが大変。

 建設会社が管理運営することはあまりないが、この施設には民間のテナントが6つ入っている。行政は平等と考えるため、なぜあの会社が入れるのか?となりやすいが、民間がやることで対応できる。しかし、年間35万人も来ると入りたい民間企業はあるので、課題となる可能性はある。

 現在は、レストラン、美容院、花屋、雑貨屋などが入っているが、テナントとして入るには、➀健康増進に関係するもの/➁賑わいを持たせるもの/➂地場振興に寄与することなどを条件としている。

 17年間の中には、大規模スポーツクラブが撤退したこともあった。現在は、分割して貸している。全体で1万㎡あるが、1,300㎡が民間テナントとして割り当てている。経営状況は、テナントを収益として見ているため、家賃収入が重要で、一時厳しい時もあった。

 平成16年度から管理運営が指定管理者となり、当初は別会社が指定管理者となった。しかし、PFI事業者と指定管理者が異なると、避難経路や消防計画など2元管理となってしまうため、平成19年度から随意契約でシビックサービスが指定管理者となった。

 施設の維持保全については、1つ誤算があった。それは、来場者数が想定より多くなったということで、使用率が上がると劣化が早くなる。20万人想定と実際の35万人とでは、空調、電気設備など劣化が早まり、これが民間側のリスクとなったため、予防保全型の施設管理をしていくこととした。メーカー部品を先に取り寄せたりする工夫も必要となる。

 全国的に、もっとも早い契約終了を迎えることとなるが、おそらくPFIの延長ではなく、指定管理者での管理運営となると考える。民間商業施設は40年ぐらいしか持たない造りだが、築33年が経過しているため、延命できるのかは疑問に思う。20年間のPFI事業における修繕費は1億5,300万円で、年間700万円しかない。ボイラー、空調の更新、外壁、給排水なども老朽化してくる。この先は、1回の修繕で20年間分ぐらいの費用がかかると思う。ここが大きな問題という認識を持つことが重要。

 今後、シビックサービスがどう関わることができるか分からないが、ノウハウを活かしてほしいと思うが、最終的には行政側の判断となる。誠意をもって管理運営してくれる事業者が選ばれることを願っている。

【視察での主な質疑】

・契約額28億円について、SPCの利益はどのくらいか? ⇒ スキームの中では、テナントがゼロでも成り立つ事業スキームを組んでいる。

・今のPFIでは、そのようなスキームはつくれないと思うが? ⇒ どこまでリスクを認識してやれるかというところ。

・4年間、遊休施設状態だった時の市民からの声は? ⇒ ショッピングセンターに多くの人が来ていたため、近くに沢山お店ができたが、ショッピングセンターが移転したら、お店も移転したので、閑散とした。市民からは市に対して、何とかしてほしいという声が多かったと思う。コンバージョン後、24時間スーパーやカラオケ店など、賑わいが戻った。また、国交省の成功事例として取り上げられ、全国各地から視察がきた。

・PFI事業の契約期間20年が終了した後について、行政側とどのような協議がされているのか? ⇒ 首長の判断によるので、決定できない状況。

【まとめ】

 藤沢市では、藤が岡二丁目地区再整備事業をPFI事業として進めており、保育園、放課後児童クラブ、地域子どもの家などの公共施設と民間収益施設を敷地内に整備する計画は本市では初となります。契約額は約41億円で、平成33年度の供用開始を目途に整備が進められています。今回の視察では、PFI事業者から、17年間SPCとして事業運営をしてきた中での、課題や成果、契約期間満了後の課題などを聞くことができました。
 藤が岡二丁目地区再整備事業は、現在、既存施設の解体、埋蔵文化財調査の段階ですが、建設後の事業運営の状況を把握・審査する上では、大変参考になったと考えます。

 以上、報告とします。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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