11月6日 静岡市に建設経済常任委員会の視察を行いました。内容の抜粋は次の通りです。
【テーマ】 静岡市下水道施設におけるアセットマネジメントの取り組みについて
平成28年度末における静岡市の下水道(汚水)の普及率は83.3%で、管渠の延長は約2,473km。大正13年から事業に着手し、平成4年度をピークとして整備が進められてきたため、整備後50年を経過し老朽化した下水道施設が多数あり、改築の必要性が生じている。
1. アセットマネジメントの一般的な話
下水道施設は下水管・ポンプ場・下水処理場など、多くの資産でできており、更に、土木・建築・機械・電気などで構成されている。そして、年数が経過すると老朽化による機能停止や道路陥没などの被害が起きる。
2. 下水道アセットマネジメントの計画策定が難しいのは
(1)下水道資産の耐用年数が土木建築系と設備系で異なる
土木・建築系は、50~80年くらいの更新に対して、設備系は15~30年での更新で、更新サイクルが違う。更に、技術革新により設備系でワンサイクルすると新しい技術(概念)が出てきて、それを採用する場合、土木系の計画と整合を図る必要がある。★合理的な更新計画を立てるために技術力を持った人の判断が必要となる。
(2)下水道資産は処理場・ポンプ場・管路の資産がある
下水道資産は、単品の個別資産だけで構成されているわけではないので、ユニット単位での更新を考える必要がある。各専門職種で考え方が違うので、職種間の調整が必要。管路と処理場ではリスクの概念も異なる。★専門技術の知識を持った人の判断が必要となる。
(3)下水道は資産数が多い
静岡市の下水資産は、マンホールの蓋7万個・本体7万個、下水管3.5万資産、取付管10万資産程度ある。★資産のデータベース化が必要。
3. アセットマネジメント手法の導入検討時(平成17年度当時)の静岡市の課題
(1)未普及地域の解消(下水道処理人口普及率70.1%)
(2)浸水対策の推進(雨水総合排水計画に基づく整備)
(3)耐震対策の推進(建築構造物の耐震化)
(4)合流式下水道の改善(下水道法施行令の遵守)
(5)施設の老朽化対策(耐用年数超過施設の改築更新)
(6)下水道事業の健全経営(維持管理コストの削減)
4. 課題の解決に向けて
【老朽化対策対応の問題点】
雨水対策・合流改善等への資金不足/改築・更新事業の集中/事故発生、震災等による処理停止/再構築事業に関するPR不足
【目指しべき目標】
(1)再構築費用の抑制・低減
(2)予算の平準化
(3)サービス水準の確保(使用料をあげない)
(4)アカウンタビリティの向上(健全度を示す)
5. アセットマネジメント計画策定
全体計画2,437kmのうち、築50年以上経過している管路を対象に、①管の腐食/②上下方向のたるみ/③管の破損/④管のクラック/⑤管の継ぎ手のズレ/⑥新入水の調査を行い、改築・修繕の必要性の程度を判断する指標として「健全度」1~5段階に設定する。
【改築シナリオの検討】
11パターンの改築シナリオをシミュレーション。シナリオ1を基本として、標準耐用年数50年でシミュレートすると、初年度に膨大な改築費用が必要となり、健全度2.3の波が繰り返される。シナリオ4では、健全度2.3の改築に年間28億円かけることで、健全度2.3が100年で収束する。シナリオ7では、改築事業費を年間7億円で固定すると、健全度2.3が増え続ける。このようなシナリオを11パターン検討した結果、シナリオ11を採用。10年間約7億円、その後約19億円に増加することで、健全度2.3が将来的に現状と同程度となる。
現状の健全度を維持するシナリオ11の場合の建設・改築等事業費想定は、年間約100億円で、静岡市第2次総合計画における総事業費100億円/年ベースと整合が図れている。
6. 導入効果の検証
アセットマネジメント手法の本格導入から5年が経過した平成25年度より、その効果を検証した結果、アカウンタビリティの向上、サービス水準の確保、投資の平準化で一定の効果が認められた。
7. 所感
下水道におけるアセットマネジメント手法の導入について、藤沢市としては、昨年12月議会の建設経済常任委員会に置いて、導入について報告がされましたが、なかなかイメージがわきませんでしたが、静岡市のアセットマネジメントの取り組みの説明を受けて、良く理解することが出来ました。
これを藤沢市に置き換えた場合、年間の事業費をどこまでかけるのか?静岡市でいう健全度について、藤沢市としてどのような設定をして、100年後にどの水準を求めるのか?というのがポイントとなると思いました。今後、建設経済常任委員会に取り組みの状況が報告されると思いますが、その際には、今回の視察を参考にして行きたいと思います。
以上、報告とします。