7月24日 議会改革検討会(ICT検討部会)として、鎌倉市議会に伺い、昨年12月議会より導入した、タブレット端末による議会運営について、視察を行いました。タブレット導入時に中心的に取り組んでいた、山田鎌倉市議会議長、議員1期目の栗原議員、議会事務局議事調査担当の菊池さんが対応をしてくれました。内容の抜粋は、次の通りです。
1. 鎌倉市議会でのタブレット端末による会議システム導入の経緯
(1)平成26年11月、議会運営委員会において、パソコンの持ち込み、議会のICT化、ペーパーレス化について協議を開始。
(2)専門部会を立ち上げ、研究・検証を行うことを確認。※専門部会は3人とのことでした。
(3)平成26年12月、議会運営委員会において、使用体験の実施、操作方法等の勉強会の実施について確認。
(4)議員向け勉強会の実施。
① 1月21日 14:00~15:30 A社
② 1月26日 14:00~15:30 B社
③ 1月28日 10:00~11:30 B社
④ 1月28日 15:00~16:30 A社
(5)平成27年2月12日、議会運営委員会において、2月議会常任委員会での使用体験の実施を確認。
(6)平成27年2月20日、13:30~/15:00~ A社及びB社同席のもと、職員向けの研修を実施。
(7)4常任委員会で使用体験を実施。
① 2月23日 教育こども常任委員会 午前中A社/午後B社
② 2月24日 観光厚生常任委員会 午前中B社/午後A社
③ 2月25日 建設常任委員会 午前中A社/午後B社
④ 2月26日 総務常任委員会 午前中B社/午後A社
※ 実際の常任委員会で、A社とB社のシステムを午前、午後にタブレット端末を交換しながら、使用体験をしたことについては、正直驚きました。なぜなら、A社かB社か決まっていない段階で、実際の議会の中で、どちらが使いやすいかの試行を行ったからです。この発想は、思いもつきませんでした。
(8)平成27年4月15日、使用体験を踏まえて、タブレット端末の機種やソフトについて、専門部会から議長あてに答申(検討結果報告)。
(9)平成27年5月18日、議会運営委員会において、導入することを確認。
(10)仕様等の概要(会議システム抜粋)
① データはクラウド管理で20GB以上とすること
② 執行部説明時に同じ画面表示が可能であること(同期機能)
③ 会議中も自由に資料のページ移動が可能であること
④ 資料ごとの公開期間のの設定ができること
⑤ 検索機能があること
⑥ フォルダについて、階層を有していること
⑦ 手書きメモができること
⑧ PDF、動画の閲覧が可能であること
⑨ 管理者権限機能があること
⑩ サーバーへのアクセス制限が可能であること
(11)仕様等の概要(グループウエア及びタブレット端末抜粋)
① カレンダーを用いたスケジュール管理ができること
② 議員・事務局・執行部間の各種連絡事項の通知が可能であること
③ 調達台数は、最大39台(最終的には予算の関係で34台)
④ Apple製iPadAir2以降に発売された機種とすること
⑤ 公費により調達し、貸与すること
⑥ ファイル、通信を暗号化すること
⑦ アプリのインストール制限を設けること
(12)その他
① プロポーザル方式により事業者を決定する
② 2年間の長期継続契約とする
③ 傍聴者用のタブレット端末は用意せず、紙資料とする
④ タブレット端末の調達等に係る費用は公費負担とする
⑤ 新たに選出された議員は、前議員からタブレット端末を引き継ぐこと
(13)契約金額(金額は2年総額、税抜き)
① 会議システム 520,720円
② タブレット端末等 5,854,400円(カバー・ペンシル含む) ※端末は購入
③ 合計 6,375,120円
(14)契約後の流れ
① 平成28年10月25日 タブレット端末納品
② 平成28年11月7日 議会運営委員会において、端末の仕様基準、紙の使用範囲等を協議
③ 平成28年11月16日~18日 事業者による研修会
④ 平成28年11月16日~17日 9月議会の中身で、模擬本会議・模擬委員会
⑤ 平成28年12月議会から正式導入
2. 運用について
(1)会議における活用方法について
① 会議資料の閲覧(議事日程・議案集等)
② 委員長報告等の原稿閲覧
③ 説明、答弁または質疑の際の補助(読み原稿、手持ち資料の閲覧)
(2)会議以外における活用方法
① 市民からの意見聴取、視察等における資料閲覧
② 情報収集
③ 議員相互、市(執行部・事務局)との情報伝達(災害時等の緊急情報伝達)
※この情報伝達については、現在、藤沢市当局がオンプレミスサーバーで検討しているため、情報伝達はできません。
(3)会議システム導入のメリット
① ペーパーレス化による、160~170万円の紙代の削減
② 会議開催通知、執行部からの情報伝達等、必要な情報をすぐに得られる(議員)
③ 紙資料の準備にかかる作業量の軽減(職員)
④ カラー印刷資料、写真等の準備が容易
(4)会議システム等の導入による課題点等
① 予算書や決算書など、複数の資料の比較ができない
② データの保存期間とサーバー容量 ※保存期間は今後の検討で、現在のデータ量は約1.7GBで、20GBの容量に対して、余裕があるとのことでした。
③ 傍聴者への対応 ※一般質問で議員が作成した資料は、議会ではタブレットで見ているが、傍聴者は紙で見ているので、配慮が必要とのことでした。
④ OSのアップデート等にWi-Fi環境が必要
(5)会議システム等の導入に伴う議事運営の変更点
① 改選後(平成29年5月15日以降)は、議案集、補正予算に関する説明書は完全電子化(改選前までは希望議員に紙で配布)
※ 決算における成果に関する報告書と事項別明細書は、現在も紙で配布しているそうです。
3. 事前に連絡した質問事項について
【改選後の議員への引き継ぎについて】
(1)新人議員にはどのような研修を行ったのか?⇒改選後、研修会の中に入れ、事務局から説明した。
(2)新人議員に混乱は見受けられたか?⇒大きな混乱はなかった。
【文書共有システム及びタブレット端末の入札について】
(1)市側と議会側の入札方法とその理由
(2)システム及びタブレット端末の一括入札にした理由
⇒システムとタブレット端末は別々に契約している。事務局で、システムのプロポーザルから契約を行い、その内容を受けて、市側は、システムを入れたタブレット端末を条件に約150台を導入した。
【文書共有システム及びタブレット端末の導入について】
(1)市長部局の使用範囲⇒課長以上約140人に1人1台配布、議会サーバーとは別に市長部局サーバーも使用、タブレット端末は持ち出し禁止。
(2)市長部局によるクラウド利用のリスクについての議論の経過⇒セキュリティの確保がプロポーザルの条件となっていたので、問題なく導入した。
(3)導入時に発生または顕在化した課題⇒手書きメモにすることで、容量が増えてしまう。アプリのダウンがまれに起き、休憩を取り再会するケースがあったが最近はない。
【運用面について】
(1)運用における留意すべき課題⇒傍聴者への対応。
(2)運用メリット⇒答え済み。
(3)タッチペンの使用の有無⇒導入している。キーボードーを使っている人もいるが、音が課題。
(4)紙資料の配布等の扱い⇒今でも紙でほしいという人がいるが、議運で決定したので断っている。
(5)運用方法と範囲⇒答え済み。
4. その他質疑(抜粋)
山内委員
栗原議員(1期目)に質問。当選後、タブレットでの議会に違和感はなかったか?⇒(栗原議員)最初からタブレットだったので違和感はなかった。資料の見比べが難しい。今後は、動画が見られることが必要と感じている。(事務局)動画は、議運でも通信量に課題があるとし、市民への資料配布、保管の仕方の検討をしていくとなっている。
いつもタブレット端末を持ち歩いているのか?⇒毎日見ている。
堺委員
タブレット端末をなぜリースでなく購入としたのか?⇒メリットデメリットを検討した結果、購入とした。
友田委員
市当局もクラウドとしているが、問題はないか?⇒神奈川セキュリティサーバー経由でmoreNOTEにアップする。急な資料請求とか、資料の修正などにも、神奈川セキュリティサーバーのチェックを受けなければならないため、時間がかかる。そのための休憩が必要となる。
5. 所感
今回の視察で、鎌倉市議会では、試行から本格運用まで、短期間で行っている。また、紙との併用についても、現在残ってしまっていると表現するほど、議長は完全ペーパーレス化をめざす一方で、1台のタブレット端末での限界もあるとのことでした。例えば、昨年の資料と比較しながら、会議を進めるためには、2台の端末が必要となるため、議員個々の取り組みになると思いますが、複数台の端末を机において議会に臨む必要もあると思いました。
市側のクラウド仕様については、鎌倉市議会の話を聞く限り、神奈川セキュリティサーバーを経由したうえで、クラウドにアップするため、セキュリティ面では問題がないのではと考える一方で、神奈川セキュリティサーバーの承認にかかる時間によっては、議会運営にスムーズさを欠く可能性があると思いました。今後、IT推進課とも今日の内容を踏まえて協議をする必要があると考えます。
以上、報告とします。