2016.10.19~20 第11回 全国市議会議長会研究フォーラムin静岡

 10月19日~20日、静岡市にあるグランシップ大ホールにおいて、全国市議会議長会研究フォーラムが開催され、出席しました。内容の抜粋は次の通りです。

10/19【1日目】

第1部 基調講演 「二元代表制と議会の監視機能」 大森 彌  東京大学名誉教授

 大森教授より、二元代表制は、首長優位の制度であり、議会としては、与野党意識をなくして、全て野党であるべき。そして、議会が存在意義を示すためには、議員間討議を尽くし、意思を集約する「チーム議会」が必要など、二元代表制のもとで、議会がとるべき対応について講演をいただきました。

第2部 パネルディスカッション 「監視権の活用による議会改革」

【コーディネーター】

 佐藤 俊昭  山梨学院大学大学院研究科長・教授

【パネリスト】

 斎藤 誠  東京大学大学院法学政治学研究科教授 (法的視点からみた監視権の活用)

 土山 希美枝  龍谷大学政策学部政策学科教授 (政策・制度の議会による制御としての監視・監査)

 谷 隆徳  日本経済新聞編集委員兼論説委員 (メディアからみた議会の監視権)

 栗田 裕之  静岡市議会議長 (監視権の活用による議会改革)

 カッコ書きに書いたように、それぞれの立場・視点で、3つの論点について、パネルディスカッションを行いました。

【論点1】監視権を使いこなす

 今日の監視機能の強化策を考える。地方自治法改正や、それぞれの議会の改革動向を踏まえて、その変化を確認する。監視機能として、予算・決算審議、議決事件の追加、100条調査権、検閲・検査、監査請求、議員派遣、一般質問、所管事務調査などといった従来の機能と、その変化とともに、議会による行政評価等の新たな活用も視野に入れる。 

【論点2】財務過程と議会

 監視権の中で、特に重要な決算認定について考える。

【論点3】監査委員制度における議選の意味、住民統制における議会の役割

 監査委員制度におれる議選の意味、議会の監視機能と住民との関係について考える。

※パネルディスカッションでの意見を聞いての所感は次の通りです。

① 一般質問の有効性

 ディスカッションの中で、一般質問は、議員1人の要望・提案なので、実現性に乏しいとの意見がありました。私は、藤沢市議会の一般質問は、目的や狙いが感じられない質問、法制度上の理由、財政上の理由など様々ありますが、実現には平行線の質問、質問を重ねることで、研究⇒検討⇒実施に向けた検討、というように、徐々に実現が図られる質問、要望・指摘を受けて、すぐに予算化や条例改正などが図られる質問に分類されると思います。なので、議員1人の要望・提案であっても、実現性が乏しいとは思いません。しかし、ここで私たち議員一人ひとりが十分に注意しなければならないのは、その要望や提案が、民意に合致しているかということです。議員本人が、そうあるべきと思っても、民意とかけ離れている場合もあります。ですから、一般質問でもなんでも、市側に要望・提案するときは、十分な根拠が必要で、将来にわたる財政負担など、様々な観点も含めて、判断したうえで質問しなければならないと私は考えます。

② 決算認定の評価

 全体の9割が、何ら意見を付けずに決算を認定しているとの意見がありました。藤沢市議会の場合は、決算審査の質疑の中で、指摘した部分について、翌年度予算はすでに執行中であるので、翌々年度へ反映させる視点で質疑がされています。従って、ディスカッションでは、付帯決議のようなことを言っていましたが、藤沢の場合は、質疑、そして各会派が行う決算討論の中で、意見・要望をし、いくつかは反映されていますので、決算審議も不十分とディスカッションでは言われていましたが、藤沢では、ある程度審議ができているのではと考えます。

③ 決算資料について

 静岡市議会での取り組みとして、決算の成果説明書を改善したとの報告がありました。取り組みの内容を詳しく掲載し、行政評価の結果も掲載したとのことです。私は、このことは大賛成で、先の9月議会の決算委員会の質疑を聞いていて、市側に同様のお願いしをしようと思っていたからです。具体的に行った事業の内容、執行率が低ければその理由、今後の方向性、今後に向けた課題などを掲載することになれば、今回の決算委員会は半分以下の時間になります。決算委員会での質問については、課題の認識が市と地元で違っているから、今後の事業の見直しを求めるとか、もっと事業を拡充・縮小すべきだ(根拠が必要)とか、決算委員会の時になって質問を考えるのではなく、課題と認識している事業について、狙いをもって質問をすべきだと私は思います。

④ 政策・条例提案について

 ディスカッションの中で、議員による政策・条例提案の話がありました。藤沢市議会では、政策提言する仕組みづくりを議会改革検討会の中で議論してきましたが、現行の仕組みでも条例提案はできるので、継続課題となっています。勿論、議員が一致して同じテーマで研究・議論して、議会として提言や条例提案することは良いことだと思います。ただ、条例改正、条例制定について、議会提案がないことで、議会の必要性まで問う意見がありますが、私は、それは違うと思います。議会での質問・要望・指摘などを受けて、市側は、必要があれば条例化や条例改正をするのです。議会が提案することが重視されがちですが、条例制定や条例改正のきっかけは何なのか?法などの改正に伴うものなのか、議会からの要望や指摘なのかが大事だと思うのです。議会からの要望・指摘で、条例化・条例改正がされたのであれば、それは、事実上の議会提案と私は思います。

⑤ 事務事業評価について

 ディスカッションの中で、事務事業評価をして議会として結論・方向性をだすことが必要という話がありました。藤沢市議会としては、2年間、決算時に事務事業評価を試行しましたが、スケジュール、事業の選択、款別審査との関係、方向性の不一致、有効性など、検討する課題が多かったため、現在は実施していません。私も、款別審査に加えて、事務事業評価をする必要性について、現状では感じられません。今後、他市議会の取り組みなどを研究したいと思います。

⑥ 監査委員制度における議選の意味について

 議選とは、議員選出の監査委員のことを言いますが、この議選については、国において選択性の議論がされているとのことでした。その是非やあり方について、正直私は、勉強不足で分かりませんでした。
 
10/20【2日目】

第4部 課題討議 「監視権の如何に行使すべきか」

 佐々木氏をコーディネーターとして、藤沢市議会、和歌山市議会、日田市議会の取組み事例の報告の後、討議が行われました。

【コーディネーター】 

 佐々木 信夫  中央大学経済学部教授

【事例報告者】

 佐賀 和樹  藤沢市議会前副議長 【議員はどうあるべきか ~100条委員会を通じて~】

 井上 直樹  和歌山市議会議会運営委員会委員長 【附属機関への参画と監視機能】

 嶋﨑 健二  日田市議会議長 【地方創生に関する政策提言~日田市議会の取組~】

※事例報告と討議を聞いての所感は次の通りです。

① 政務活動費を使用しての監視

 政務活動費を使用しての監視について話がありました。藤沢市議会では、佐賀議員が事例報告した、善行の土地問題について、議員有志で土地鑑定評価を行いましたが、この費用は政務活動費を使用しました。これは、市側の鑑定評価額が適切なのか監視するための鑑定評価であり、まさに政務活動費を使用した監視です。しかし、このような特別な場合を除いては、政務活動費を使用した監視は思いつきません。しかし、そういった視点も必要だと感じました。

② 通年議会について

 通年議会の話がありました。通年議会にした場合は、議会の監視権の枠外にある専決処分がなくなります。そういう意味では、通年議会というスタイルをとることは良いことだと思います。現在でも、各常任委員会、各特別委員会、議会改革検討会などの会議が、議会閉会中に開催されています。通年議会にしても、現状とあまりスケジュールは変わらないと想定できますし、専決処分がなくなると考えれば、検討に値すると考えます。

③ 附属機関への参画について

 和歌山市議会では、附属機関に議員が参画することで、事前に情報が入り、方向性を確認することができるため、様々な附属機関に参画しているとのことでした。私は、附属機関へ参画する議員が、議会の総意として発言することは難しいのではと思いますし、会議の報告もしなければ共有はできません。そう考えると、議員のあて職的な参画が現実的で、議会側から積極的に参画して関与していくことは難しいのではと感じました。

④ 100条委員会報告

 藤沢市議会の佐賀議員が、今回の研究フォーラムのテーマに合致する、善行の土地の100条委員会の取組を報告しました。当時、頻繁に開催された100条委員会が思い出されます。現在、土地の売買契約解除の合意はされていますが、売買代金の支払いがされていないというところまでは把握しています。今後も注視していきたいと思います。

 佐賀議員、大変お疲れさまでした。以上、報告とします。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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