2016.5.6 世田谷区における若者支援を視察

 5月6日 10:00より、世田谷区における若者支援の取り組みについて、区役所に伺い、子ども・若者支援部若者支援担当課長、係長より、取り組み内容の説明を受けました。

1. 世田谷区の現状

 世田谷区は、人口90万人を超え、現在も人口は増加しており、特に乳幼児は毎年1,000人規模で増えているとのことで、世田谷区で産み育てる世帯が多いと言います。一方で、待機児童は1,000人を超えており、6,000人規模の整備をしても追いつかない状況にあるとのことです。生まれてからの居場所づくり~世田谷区の担い手になることを目標に、特に18歳からの支援に区長の強い思いがあると言います。

 子どもの居場所については、全学校に放課後児童クラブ(小学3年生まで)+放課後子ども教室の機能を併設し、児童クラブのバックアップを児童館の職員が行うとのことです。これは、児童館の職員が児童クラブの職員を兼ねているもので、公設公営の直営体制だから出来るとのことです。児童館は、18歳までの子どもの居場所で、地域のコミュニティの場となっており、育った人が地域を支えるようになるので、地域全体で若者を支援する考えとなっています。

2. 若者の居場所支援について

 ひきこもりや不登校で悩む若者は、統計から、世田谷区内には5,200人以上いると想定。その若者の居場所づくり、活動場所づくりが必要として、基本計画に位置付けました。生きづらさを抱える若者へのサポートとして、次のような取り組みをしているとのことです。

(1) 世田谷区若者総合支援センター

 この総合支援センターには3つの機能があり、若者の状態に適切な対応が取れるようにしています。

 ① メルクールせたがや

  社会参加のきっかけを作りたい、学校生活になじめない人に対して、相談(訪問相談の含む)、気軽にコミュニケーションがとれる居場所、家族を対象としたセミナーなどを行っています。

 ② せたがや若者サポートステーション

  働くことに不安のある若者に対して、個別相談、体験プログラムなどを行います。

 ③ ヤングワークせたがや

  今後の働き方を明確にイメージできるよう、応募書類の書き方や面接対策、職場見学・体験や仕事講話などで働くイメージをつくります。

  この3つの機能が、1つの施設にあり、連携できることが強みだと感じました。藤沢市に置き換えると、ユースワークふじさわ、大船にある湘南・横浜若者サポートステーションなどになるのでしょうか。。。

(2) 野毛青少年交流センター

 若者の居場所として、自然環境などを活かした、非日常的な生活ができる居場所として、宿泊もできるようになったとのことでした。大学生などがサポーターとなり、小・中・高校生世代の居場所づくりを企画・運営しており、身近なお兄さん・お姉さんとして、相談相手になっているとのことでした。

(3) 池之上青少年会館

 若者の居場所として、日常活動の延長のような居場所として、サークル活動に力を入れて、文化祭やダンスフェスティバルなどを開催しているとのことでした。

(4) あいりす・たからばこ(大学生が運営する居場所)

 世田谷区内の大学(昭和女子大・日大)と連携して、大学生が運営する居場所として、あいりす(区の施設の一部利用)・たからばこ(民家を利用)を設置しています。夜20時まで運営していますが、開設間もないこともあり、若者がなかなか集まらない状況とのことでした。

3. 児童養護施設退所後の自立支援について

 せたがや若者フェアスタート事業として、児童養護施設等を巣立つ若者への支援を行っています。児童養護施設は18歳までの施設であり、施設を退所した瞬間に厳しい環境に当たります。進学するための学費、1人暮らしをするための家賃や保証人など。。奨学金といっても、借金と同じで返済の義務が発生すれば、進学して就職したとしても借金からのスタートになります。そこで、他の若者と同じスタートラインに立ち、将来に夢が持てるように、次のような支援を開始しました。

(1) 新しい奨学金制度

 進学にあたり、親族等の経済的支援が受けられない若者に対して、かかる費用の一部を給付します。対象は、区内の養護施設、里親等を満18歳で退所し、今後も親族等から支援を受けられない若者。給付額は、上限年額36万円で、途中で退学しても返済の義務はありません。この36万円は、最低限必要な額から、他の公的資金などを差し引いた額として算出したとのことでした。

※この給付型奨学金については、議会からも反対があったそうです。国がすべきだ、なぜ児童養護施設の退所者だけが対象なのかなど。。。できるところから対応しようとし、その原資として基金を設立し、一般会計から5,000万円を繰り入れたとのことでした。そして、基金を単に切り崩すのではなく、広く寄付を呼びかけ、寄付金で運営できることを目標にして実施することで、議会の理解も得られたとのことでした。寄付金の状況を聞いたところ、4/1からスタートし、4月末までの1か月で約280万円集まったとのことでした。しかも、大口の寄付ではなく小口の寄付が中心だそうです。対象者が今年度20人弱とのことでしたので、20人として20人×36万円=720万円が必要であり、すでに280万円の寄付がありましたので、今年度の見通しは立ったのではないかと思います。実際の説明でも、国の動きもあるので、10年間を目安として取り組むが、おそらく国の制度として実施がされるのではないかと想定している面もありました。しかし、それを待ってではなく、実施たことは素晴らしいことだと思います。

(2) 住宅支援

 児童養護施設を退所した後に直面するのは住むところです。そこで、退所後の一定期間、住まいを提供することで、就学・就労の支援をします。退所後の概ね2年、4年制大学等へ進学した場合は別途検討としますが、区営住宅を対象に、家賃負担を1万円とし、残りを区が負担します。区営住宅の広さや形状により、ルームシェアとして複数の対象者で区営住宅をシェアする仕組みとなっています。

4. 視察して

 若者の様々な支援については、藤沢市としても同様の取り組みをしていますが、世田谷区のような総合支援センターにおける、1つの施設に集約されていることで、より丁寧な対応ができると思いました。ただ、これは理想的なものでもあり、1つの施設でなくても、十分な連携ができれば、対応可能だと思いました。

 子どもの居場所支援について、児童館と児童クラブの運営については、直営とのことで、直営だからこそのメリットを感じることが出来ました。ただ、藤沢市の場合、現実的には、指定管理を直営にすることは難しいと思いますが、児童クラブの対象者を小学3年生までとしていたことについては、藤沢市の6年生までとは大きく異なり、現場の状況などを精査してみる必要はあると感じました。

 そして、児童養護施設等の退所者を対象とした給付型奨学金については、確かに国がしっかり対応すべきものだとは思いますが、世田谷区で基金を設置し、寄付金を募ることで運営が見込める状況であり、先進的な取組として多いに参考になりました。

 合わせて、住宅支援についても、藤沢市の北部の市営住宅の空き状況を踏まえて、検討する余地はあるのではと思いました。いずれにしても、同じ若者としてスタートラインに立てない、児童養護施設退所者に対する経済的支援、住宅支援は必要であり、藤沢市としても制度設計を検討するべきであり、そのために、本日伺った世田谷区の取り組みは行政としても参考になるのではと思いました。

 以上、報告とします。


おおや徹

藤沢市のためにがんばります!

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